熱処理の基礎知識

熱処理とは、金属を加熱・冷却することで硬さ・強度・靭性・耐摩耗性などの性質を意図的に変化させる加工です。主な種類として、焼入れ・焼戻し・焼なまし・焼ならし・高周波焼入れ・浸炭焼入れ・窒化処理・サブゼロ処理などがあります。

アイキン熱処理工業では真空焼入れ・プラズマ窒化をはじめ10種類以上の熱処理を承っております。

焼入れは鋼を高温に加熱した後に急冷し、硬度を大幅に高める処理です。ただし焼入れ直後は硬い反面、非常に脆い状態になります。そこで続けて行う焼戻しで適切な温度に再加熱することで、靭性(粘り強さ)を回復させます。

硬さと靭性の両立が必要な部品には、この2工程をセットで行うことが基本です。

浸炭焼入れは、低炭素鋼の表面に炭素を浸透させてから焼入れすることで、表面だけを硬化させる処理です。内部は軟らかく靭性を保ちながら、表面は高硬度・高耐摩耗性を持たせることができます。

歯車・シャフト・ピン・カムなど繰り返し荷重や摩耗が生じる機械部品に広く使われています。

処理メニュー比較

どちらも「表面を硬く、内部を靭性のある状態に保つ」表面硬化処理ですが、原理と適用が異なります。

浸炭焼入れは低炭素鋼(SCM415等)の表面に炭素を浸透させてから焼入れする化学的処理で、均一で深い硬化層が得られます。硬化させたくない箇所には浸炭防止剤の塗布やタップ部へのボルト挿入などのマスキングで対応可能です。

高周波焼入れは電磁誘導加熱で表面のみを急速加熱・急冷する物理的処理で、中炭素鋼以上(S45C等)に適用し、必要箇所だけの部分硬化が可能です。ただしワーク形状によっては汎用コイルでは対応が難しく、専用コイルの製作が別途必要になる場合があります。

当社は両方承っており、鋼種・形状・要求仕様に応じて最適な工法をご提案いたします。

主な違いは「冷却媒体」と「酸化の有無」です。

真空焼入れは窒素ガス冷却を用いるため、表面の酸化・脱炭がなく光輝仕上げが得られ、歪みも比較的少なく抑えられます。SKD11・SKD61・SKH51などの工具鋼や精密金型に最適です。

油焼入れは冷却速度が大きいため焼入れ性に優れ、SCM440などの構造用鋼や深い硬化深さが必要な部品に適しています。ただし表面の酸化スケールが発生し、歪みも生じやすい傾向があります。

鋼種・寸法精度要求・後加工の有無で選定します。当社は両方に対応しているため、最適な工法をご提案できます。なお、当社第二工場の真空熱処理では、各メーカーの相当種(プロテリアル・大同特殊鋼などの改良鋼)にも対応しております。詳細は相当種対応表をご参照ください。

窒化処理は窒素を表面に浸透させて硬化させる処理で、処理温度が低い(500〜600℃程度)ため変形が極めて少ないのが最大の特長です。浸炭処理は炭素を浸透させるため処理温度が高く(900℃以上)、変形が生じやすい反面、深い硬化層が得られます。

当社のプラズマ窒化(イオン窒化)は、グロー放電により窒素イオンを製品表面に衝突させる方式で、マスキングによる部分処理も可能です。変形を嫌う精密部品や、耐摩耗性・耐焼付性が必要な摺動部品に特に適しています。

真空焼入れについて

弊社の真空炉では窒素ガスによる冷却を採用しています。油冷と比較して冷却速度が緩やかなため、ワーク全体が均一に冷却されやすく、急激な温度差による歪みが抑制されます。

さらにIHI機械システム製マルチフロー加圧ガス冷却型真空炉では、炉内全体に均一に吹き出す冷却ガスフローと、減圧から加圧まで任意に選択できる冷却強度制御により、高精度な処理を実現しています。

炭素工具鋼・合金工具鋼(冷間ダイス鋼SKD11等・熱間ダイス鋼SKD61等)・高速度工具鋼(SKH51等)・マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS420J2・SUS440C等)・軸受鋼(SUJ2等)・機械構造用炭素鋼(S45C等)・機械構造用合金鋼(SCM435・SCM440等)など幅広い鋼種に対応しています。

上記以外の鋼種についてもお気軽にお問い合わせください。

弊社の真空熱処理炉は有効寸法600×600×1,000mmです。4基の真空炉を保有しており、処理量にも柔軟に対応可能です。

サイズ上限を超えるワークについてもご相談ください。

はい。真空中で加熱するため酸化スケール(黒皮)が発生せず、光輝な表面仕上がりが得られます。後工程の研磨や洗浄を省略・簡略化できるケースも多く、トータルコストの削減にも貢献します。

なお、弊社では焼戻し工程は大気炉で行うことが一般的です。真空炉での焼入れから焼戻しまでの一貫処理も可能ですので、ご要望の際はご相談ください。

SUS440Cなどのマルテンサイト系ステンレスは真空焼入れに対応しています。医療機器・食品機械・刃物類など耐食性と硬度を両立させたい用途に適しています。

オーステナイト系(SUS304など)は焼入れ硬化しない鋼種ですのでご注意ください。詳しい鋼種の対応可否はお問い合わせください。

仕様・品質

SCM415の浸炭焼入れでは、表面硬度HRC58〜62程度、有効硬化層深さ0.5〜1.5mm程度が一般的な目安です。

ただし、ワークの大きさ(質量効果)により結果が異なります。肉厚が大きいワークでは冷却速度が遅くなるため、硬化層が浅くなったり表面硬度がやや低くなる場合があります。具体的な仕様はワーク形状・使用条件に応じてご提案いたします。

SKD11の寸法変化は焼戻し温度によって大きく異なります。焼入れ直後は残留オーステナイトにより収縮〜±ゼロ程度。低温焼戻し(180〜200℃・HRC60〜62狙い)では収縮傾向が維持されます。高温焼戻し(500〜530℃・HRC58〜60狙い)では二次硬化に伴い膨張に転じ、±ゼロ〜若干膨張となります。

当社では鋼種・狙い硬度・ワーク形状に応じた焼入れ・焼戻し条件の最適化と、必要に応じたサブゼロ処理の組み合わせで寸法変化を管理しています。

有効硬化層深さは、JIS規格(JIS B 6905・JIS G 0557)により「硬化層の表面から、規定する限界硬さの位置までの距離」と定義されています。全硬化層深さは「硬化層の表面から、硬化層と生地との物理的性質の差異がもはや区別できない点までの距離」です。

図面に記載される硬化層深さは通常「有効硬化層深さ」を指します。浸炭焼入れ・高周波焼入れ・窒化処理それぞれで、限界硬さの規定値が異なりますのでご注意ください。

混載処理は、複数のお客様のワークを同じ炉で一緒に処理する方式です。肉厚や鋼種の近いワークを工場長が選定・組み合わせ、適切な温度・時間条件のもとで処理いたします。コストを抑えたい場合に適しています。

非混載処理(炉専有)は、お客様のワークだけで炉を専有する方式です。事前にトライ(投入量・置き方の検証)を実施し、最適条件を確立したうえでQC工程表を作成・ご提出いたします。品質保証やトレーサビリティを重視されるお客様に適しています。なお、適正量が確定すれば、結果として混載処理より安価になるケースもございます。

どちらの方式が適しているかは、品質要求・数量・コストのバランスでご提案いたします。お気軽にご相談ください。

料金・納期・発注

お問い合わせフォーム・お電話・FAXにてお気軽にご連絡ください。図面がある場合はご提供いただくとスムーズです(素材・荒加工・半仕上げのいずれの段階でも構いません)。

図面がない場合は寸法・形状・鋼種・規格硬さをお知らせください。処理の種類や硬さの指定が不明な場合も、特級金属熱処理技能士がご相談に応じ最適な処理をご提案します。

処理内容や鋼種によって異なりますが、代表的な標準納期の目安は以下のとおりです。

素形材の熱処理(第一工場)

  • 大気焼入れ+大気焼戻し:中2営業日
  • 大気焼ならし・大気焼なまし・ショットブラスト:中1営業日
  • 大気焼入れ+大気焼戻し+歪矯正+応力除去:中6営業日

金型・精密部品の熱処理(第二工場)

  • 真空焼入れ+高温焼戻し2回(SKD11相当種等):中1〜2営業日
  • 真空焼入れ+低温焼戻し2回(SKD11相当種等):中1営業日
  • 無酸化焼入れ+焼戻し:中1営業日
  • プラズマ窒化:中2営業日

※ワークの大きさ・数量・処理条件により前後いたします。正式な納期はお見積もり時にご回答いたします。

特急対応

熱処理は温度と時間の管理が品質を左右するため、炉の設定時間を短縮することはできません。ただし、休日対応等により通常より早くお届けできる場合がございます。特急対応には別途特急料金が発生いたします。

集配サービス

自社トラックでの集配体制で、引き取りから納品まで一貫して対応可能な場合がございます。集配の対応エリア・頻度はお取引内容により異なりますので、お問い合わせください。

はい、1個からご対応いたします。試作段階での条件出し・量産前の確認処理・材質変更に伴う試験処理なども承っております。処理結果をもとに量産条件をご提案することも可能です。少量からお気軽にご相談ください。

はい、可能です。材質(鋼種)・形状・おおよその寸法・目標硬度をお知らせいただければお見積もりいたします。現物をお持ちいただいてのご相談にも対応させていただきます。

はい、ご要望に応じて処理証明書・硬度検査成績書を発行いたします。

もちろんです。新規のお客様もお気軽にご相談ください。まずはお問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。図面または寸法・形状・鋼種・規格硬さをお伺いしたうえで最適な処理方法をご提案し、お見積りをご回答いたします。

対応エリア・取引実務

はい、全国からのご依頼に対応しています。名古屋市内・愛知県内のお客様には自社トラックによる集配サービスをご提供できる場合もございます。東海3県(愛知・岐阜・三重)のお客様もご相談ください。遠方のお客様は宅配便でのお送りも可能です。

当社は名古屋市内に3工場を構え、お客様のワークの工程段階に応じて処理体制を使い分けています。

第一工場

素形材の大気熱処理全般を専門としています。鍛造品・鋳造品・鋼材・ガス溶断材など、加工前の素材に対する調質・焼ならし・焼なまし・応力除去・ショットブラスト等を承っております。

第二工場(本社併設)

金型や機械部品など、半仕上げ〜完成品に近い段階のワークに対する高度な熱処理を専門としています。真空焼入れ・無酸化焼入れ・プラズマ窒化(イオン窒化)・サブゼロ処理・プレステンパー等、精密さが要求される処理を承っております。

第三工場

第一工場の補佐として、焼ならし・焼なましに特化した大型大気炉を備えています。大型ワークや繁忙期の処理能力を補完する拠点です。

素材から完成品までの製造工程の中で、どのタイミングで熱処理を行うかによって工場が決まります。

はい、他社で処理された製品の再処理・修正処理も承ります。硬度不足・硬度過多・歪みなどの問題がある場合、現物を確認のうえ最適な再処理方法をご提案いたします。

ただし、前処理の履歴や材質が不明な場合は結果を保証できないケースもございますので、事前にご相談ください。

自社トラックでの集配体制を整えています。引き取りから納品まで一貫して対応可能な場合がございます。梱包は処理品の大きさ・形状に応じて適切な方法で行い、搬送中の損傷を防止します。

遠方のお客様には宅配便での対応も可能です。集配の対応エリア・頻度はお取引内容により異なりますので、お問い合わせください。

品質・実績・認証

ISO9001(品質マネジメントシステム)およびISO14001(環境マネジメントシステム)のもと品質と環境の両面で継続的な改善に取り組んでいます。また特級金属熱処理技能士4名・1級技能士4名・2級技能士5名が在籍しており、高い技術力で品質管理を行っています。

はい、対応しています。自動車部品・産業機械部品・医療機器部品・精密金型など幅広い業種の実績があります。トレーサビリティへの対応や特殊な品質要求についても、まずはお気軽にご相談ください。

創業以来350社以上との取引実績をもとに最適な処理をご提案します。

JIS規格は化学成分や硬さが「範囲」で定められているため、製鋼メーカーが違うと規格内でも結果に差が出ることがあります。特にS45Cなどの炭素鋼は合金元素が少ないため、ロット間のばらつきが顕著に現れる性質があります。

ばらつきの原因や当社の品質管理体制について、詳しくはお問い合わせください。

熱処理に関するご質問・お見積りのご依頼はお気軽にどうぞ

お問い合わせはこちら